「FREEDOM(PROGRESSIVE ROCK Ver.)」IRON FOX
■作詞・作曲:小室哲哉 ■歌・編曲:IRON FOX(アイアン・フォックス)
オリジナルソング「FREEDOM」西川貴教 with t.komuro © 2024 by SONY MUSIC LABELS INC.
■制作・文:IRON FOX
こんばんはでございます…。とうに桜の花びらも散り、ゴールデンウィークの賑わいも消え去った5月も下旬…「週刊ガンダムニュース(WEEKLY GUNDAM NEWS)」以外のカテゴリーとしては、今年に入って“初“となる記事になります…。
ガンプラの改造作品もアイデアから制作、そして記事にするまでかなりの時間を要しますが、曲の制作となるとミックスダウンがネックとなり、それ以上に時間がかかってしまいます。何たって私、まだまだミックスダウンの基礎が身についてませんから、ワッハッハッハッ………はぁ💧
そして今回はミックスダウン以前にボーカル録音がまた大変でして、まずは単純に曲全体のキーが高い…。原曲キーで1度録音し、簡単に曲と合わせてみたところ、終始キーが高くてツラそうな感じが出まくっていたため、けっきょく再度キーを3つ下げて録り直しました…。
さらにもう一つ、この曲は音域(声域)が広い…。原曲キーでいうと下はE(ミ)の音から上は1オクターブ上のA(ラ)の音までとなり、サビパートで言うと最初の音が低すぎて出しづらいE(ミ)で、最後の音が高すぎて出しづらい1オクターブ上のG(ソ)という、もう高低差ありすぎて耳キーンなります…。
それにしても、これほどの高いキーと広いレンジで上下する難しいメロディーをあの声量で歌いこなす西川のアニキは、連邦のモビルスーツ同様バケモノです。(誉め言葉)あの歌唱姿を見れば、アムロじゃなくても思わず「圧倒的じゃないか…」と呟いてしまうでしょうし、西川のアニキ量産の暁には連邦など、あっという間に叩いてしまえるでしょう…???
…というわけで、どういうわけかわからなくなってきましたが、この歌も曲も迫力満点の「FREEDOM」をロック色、強め(ボーカルの迫力は弱め…💧)のアレンジで制作させていただきましたので、何かのついでにぜひ聴いてみてください☆
■Youtube
【ガンダム カバーソング】「FREEDOM(PROGRESSIVE ROCK Ver.)」(『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』主題歌)IRON FOX
使用機材や使用ソフト等は、前回までと同じになるため割愛させていただきます。気になる方は怖いもの見たさで下記ページをご覧ください。古すぎて逆に新しくさえ見える機材を使っています…💧
今回もハモリパートやラストのセリフ部分にて活用した女性ボーカルパートの編集方法の説明、“「Vocal Shifter LE」を使った女性ボーカルの作り方”も載せてあります。
■参考ページ
各パート説明
インストパート(全体)
インストパートにおいてはバンドサウンドを意識しましたので、打ち込みのシーケンスパートやアルペジエイターのフレーズは使わずに、あくまで手弾きの演奏を基本としました。(かなりテンポを落として弾いている部分も多々ありますが…💧)
曲の進行に関しては、原曲ではイントロなしで英語歌詞のパートが始まりますが、その後のサビのパートから始まります。その英語歌詞の部分は2コーラスのBメロ後に持っていき、原曲とは違う展開になっています。
その他の部分の流れは原曲とほぼ同じですが、この「FREEDOM」は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』主題歌、「BEYOND THE TIME」(TM NETWORK)以来の小室氏の楽曲ということで、曲の中で何か繋がりを持たせようと、最後のサビの後に「FREEDOM」のサビのコード進行と同じパートを繰り返し、そのパートの上に「BEYOND THE TIME」のイントロで印象的なメロディーのフレーズを乗せたパートを追加しました。「FREEDOM」と「BEYOND THE TIME」のフレーズが合わさり、不思議な感じになっています。まさに時空を切り裂いて、メビウスの宇宙(そら)を越えて融合しました☆
ちなみに原曲の「FREEDOM」では「BEYOND THE TIME」レコーディング当時に演奏されていたギター(鳥山雄司氏)とドラム(山木秀夫氏)の方が参加されているという繋がりがあり、さらに「BEYOND THE TIME」の曲の頭に鳴っているギターのアルペジオ(♪チャララーンの部分)が「FREEDOM」のラストでも同じコードで鳴っている…と、TV番組『プラモnoハナシ』最終回の中でアニキ西川が語っていました。
ここからは、もう少し細かい説明をパートごとにしていきたいと思います。
イントロ
・イントロ①(サビ)(00:18)・イントロ➁(00:47)
※()内はYoutube動画での目安の時間です。
ピアノ・ストリングス・コーラスをバックに、いきなりサビのメロディーから始まります。歌から始まるというのは今どきの主流ですね。歌が終わるとギター・シンセリード・ベース・ドラムを加えて一気に盛り上げていきますが、その後いったん8ビートのギターリフのみで雰囲気を変え、16分のスネアとタムが流れた後、本編スタートといった感じでロック調の曲がスタートとなります。1小節ごとに左右にパンを振ったシンセリードのソロをアクセントにしています。
最初の歌の後に出てきた、ギター・シンセリード・ベース・ドラムの譜割り(下画像)は、2コーラス目、ラストのサビ9小節目からのギターのフレーズや、その後の「BEYOND THE TIME」のフレーズが流れるパートのギター・ベース・ドラムも同じ譜割りを基本として演奏しています。統一感です☆
Aメロ
・1コーラス(01:15)・2コーラス(02:58)
イントロ➁の8ビートのギターリフをAメロのコード進行に合わせて変えたギターリフがメインとなるパートです。ベースもオクターブ下でユニゾンで演奏しています。(実際のベースの最低音、Eを下回った音を弾いていますが、1オクターブ上げると全体的に迫力が半減してしまうので力で押し切っています…💧)
1コーラス9小節目(繰り返しの部分)からはストリングスも加えて音の厚みを出し、繰り返し部分が間延びしないように変化をつけています。変化という点では、1コーラス目はギター・ベースに加え、左右にパンを振っているシンセリード、2コーラス目はギター・ベースに加え、オルガンパート…と、1コーラスと2コーラスで全く同じ演奏にならないように違いをつけています。
Bメロ
・1コーラス(01:42)・2コーラス(03:12)
キーが半音上がってガラリと転調するBメロです。原曲では感情を揺さぶるメロディックなバラード風のパートですが、原曲とは方向性を変え、ギターでリズミカルなフレーズを刻み、ベースとストリングスがアクセントの位置で支える、パターン的なパートにしてみました。Bメロの最後は3連符のリズムにし、2コーラス目のBメロ後は、そのままのリズムで英語歌詞の3連符パートへと自然な流れで続いていくようにしました。
Aメロ同様、ただの繰り返しにならないように1コーラス目はシンセリードだったパートの代わりに2コーラス目ではオルガンパートに変更し、違いをつけています。それと2コーラス目のみ、ハモリパートのコーラスも入っています。
サビ
・1コーラス(02:17)・2コーラス①(04:27)・2コーラス➁(04:55)
通常では、1番盛り上がるサビの部分ですが、今回のアレンジでは曲全体を通してラストに向かって盛り上がっていく感じにしたかったので、1コーラス・2コーラス(8小節まで)のサビではまだ盛り上がりません…というか、むしろ逆に盛り下がります…。静かなイントロから始まり、いろいろな場面を経てラストのサビ(2コーラス➁)で一気に爆発するイメージにしました。この“1曲の中に様々な場面展開を持たせたこと”が「プログレッシブロック バージョン」と名付けた所以となります。
3連符パート[英語歌詞部分]
(03:46)
原曲ではド頭から始まる英語歌詞のパートですが、こちらはイントロ➁のソロだけでは物足りないとばかりに、ギターリフをバックに再びシンセリードのソロから始まります。
歌メロの譜割りが1拍(四分音符)ごとなので、バックの演奏を3連符のリズムに変えても乗せられる…と考え、静かな雰囲気の中にも力強さを秘めているような原曲とは違い、楽器の数も多く、タムが騒がしくドンドコ鳴りっぱなしの力強さをストレートに表現したパートに変えてみました。(3拍目に入る、雄叫びのような声もあり何だか怪しい地下組織の決起集会のような雰囲気にも聞こえます…。)
ちなみに、この3連符パートのギターリフ・ベース・オルガンのフレーズは、2コーラス目のサビ9小節目からの16分のギターリフのフレーズを3連符に置き換えたものであり、リズム自体は同じとなります。(下画像)これも全体としての統一感を出すためのギミックであり、「我ながらいいアイデアだ☆」…と自己満足に浸っていますが、おそらく誰にも気づかれないでしょう…💧
ラスト「BEYOND THE TIME」パート
(05:29)
原曲ではラストの「♪FREEDOM」という歌詞で終わっていきますが、その後さらに「BEYOND THE TIME」の聞き慣れたフレーズと共に、余韻に浸るリフレイン的なパートを付け足しました。演奏時間が6分弱になってしまいましたが…。
英語の歌詞をセリフ調にして乗せてみたり、最後に少し間をおいて“Freedom”…と言う部分は「イイこと思いついたなー☆」…なんて思っていましたが、よくよく考えてみたら「TM NETWORK」の曲、「Children of the New Century」(アルバム「humansystem」収録)の曲最後の部分と同じ手法でした…。影響受けまくりです。TMのみなさん、40周年おめでとうございます☆
●関連記事
ミックスダウン(メインボーカルパート+ハモリパート)
まずメインボーカルパートですが、各パートごとに録音した中から良かったテイク(パート)を選び「Vocal Shifter LE(無料版)」にて軽くピッチ補正をし、その後ボリュームを揃えていきます。(後でミックスダウンのソフトでもオートメーションで調整しますが、私は「Vocal Shifter」のほうが使いやすいので最初の段階で、ある程度揃えます。)ボリュームは揃えすぎると全体的に平坦な感じになり、ボーカロイドやエレクトロミュージックのような雰囲気になってしまうので、バンドサウンドに合うよう揃えすぎないように注意しました。
音量を下げる時は、波形の大きい箇所だけを下げると不自然になってしまうので言葉、一音単位で区切って下げるようにしています。それと音量の話で言うと歌詞の「イ行」・「ウ行」は、画面の波形で見ると小さくても、実際は見た目より大きく聞こえますので、他の「イ行」・「ウ行」以外の部分の波形に合わせて音量を上げないように注意しました。(個人的な見解ですので、参考程度にしてください…💧)
その後、すでにインストパートを読み込ませた「Cakewalk」(ミックスダウンソフト)上にそれぞれのパートを並べていきます。(ボーカルコンピング)そしていったんボーカルパートのみを出力し、iZotope「RX8 Elements」にてノイズを除去していきます。
・出力後「Vocal Shifter LE(無料版)」で再度編集する場合は「Cakewalk」での出力(エクスポート)を“16bit”で行ってください。※LE(無料版)は、16bitまでしか読み込めません。
「RX8」では、まず「De-hum」にて電源ノイズ(ハム)を除去をします。波形の歌以外の部分(ノイズのみ)を選択し、Learnボタンでノイズを覚えさせたら全体をRenderで実行します。次に「Voice De-noise」で環境音(ハムノイズ)を除去します。こちらも歌以外の部分を選択し、ノイズを覚えさせたら画面右側のThreshold[dB](効果のかかり始めのレベル)とReduction[dB](ノイズ除去の強さ)で実際に聞きながら調整し、実行します。
他にもクリック音(アタックが強いノイズ)を除去する「De-click」やレベルオーバーでクリップした音を除去する「De-clip」などの項目もありますが、今回は使用していません。本来は、しっかりと防音された部屋で極端な音量のバラつきがないように歌いあげ録音出来れば、音量調節やノイズ除去、コンプレッサーの使用といった作業も少なくなるんですけど、防音設備のない部屋で歌の技術もない身ですので多くの工程が必要になってきます…。(一軒家というのが唯一の救いです。)
ハモリパートも上記のメインボーカルと同じ要領で作業を進めていきます。「Cakewalk」上での配置に関して私個人での設定としてメインボーカルより下の低いハモリパートは左に50%、上の高いハモリパートは右に50%、その間のハモリパートがある時は右に25%にパンを振り、さらにハモリパート全体に効果がかかるバストラックに、前回から使い始めたプラグイン、iZotope「Ozone Imager V2」を使い、さらにステレオ感を広げています。このプラグインは効果の割合を上げればステレオ感が広がりますが、逆に0より下に下げていけば、どんどん中心に寄っていくのでメインボーカル等、ど真ん中に置きたいパートにも使うことが出来ます。
■iZOTOPE「Ozone Imager V2」(無料)ダウンロードページ
→https://www.izotope.jp/jp/products/ozone-imager-v2/#
※他にもフリーのプラグインソフトがあります。
■iZOTOPE「フリープラグイン」ページ
→https://www.izotope.jp/jp/products/category/free/
ミックスダウンのプラグインやEQ(イコライザー)の設定などについては次回作の記事にて、その時点での自分の処理の仕方を書こうと思っています。(参考になるかわかりませんが…💧)
今現在は、“埋もれて聞こえないボーカルパートは、さらに音量を上げるのではなくボーカルの周波数帯域をインストパートの中に作ってあげる”…ということを勉強している段階です。
ついつい、あの音もこの音も聞かせたい…と各トラックのボリュームを上げがちですが、けっきょく全体的に音が大きくなっただけで何も解決していない…なんてこともよくありました。もちろんインストパートの各トラックにも同じことが言えるので、周波数帯域が被って音がマスキングされないようにEQで調整したり、音が聞こえる位置(パン)などで、すみ分けの作業も必要になります。
一応、今回の曲で使用した各トラックのパン(音が聞こえる位置)の設定を図にした画像も載せておきます。(下画像)私自身EQの調整はもちろん、ミックスダウンの作業について、まだまだ理解していない部分も多く、大まかなイメージでしか捉えていないこともたくさんあるので、なかなか胸を張って教えることも出来ませんが、ほんの少しでも参考になれば嬉しく思います。
●メインボーカル・ハモリパート・インストパート
※シンセリードは、曲中の場所によって左右(左75%・右75%)入れ替わるので省略してあります。
●ドラムス
最後に…
旬の曲を旬の時に披露しようと今年に入って早々と、この「FREEDOM」の制作に入りましたが、けっきょく完成したのは劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』上映終了、直前となってしまいました…。楽曲とボーカルの録音は2月半ばには終わっていたのですが、やはり立ちはだかる「魔王ミクス・ダーウン」(ミックスダウン)…。それから約3ヶ月間、ずっと戦い続けていました…💧
設定の見直しをすればするほど、いいミックスになるわけでもなく、数日前のバージョンのほうが良く聞こえたりするので毎日、進んで戻っての繰り返し…。「FREEDOM」なのに、いつまでたっても自由になれないぞー!!…と、こんなに時間がかかってしまいました。
…というわけで、本家「FREEDOM」を王道とするならば、私のカバーソングは“王道ではない”という意味の「アストレイ」…。たまにはこんなカバーソングも箸休めで聴いてもらえると嬉しいです。
次回のガンダムカバーソングは現時点では白紙も白紙、まっしろしろすけ状態ですが、もう少し制作期間を短くし、数多くの曲をお届けしたい!…と一応、思ってはいますので、このコーナーを忘れないよう、ちょっぴり気長にお待ちください…。ではまた☆
●関連商品